敷金の返金条件は?返金時期や相場は?返金トラブルを回避する方法も解説
賃貸物件を借りる際に、必ず支払う費用の1つが敷金です。当たり前のように支払ってはいるものの「敷金をなぜ払う必要があるのか」「返金される条件は何か」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。今回は「敷金とは何か」を解説しながら、返金時期や返金の条件について紹介します。賃貸物件の原状回復ができていないなど、場合によって敷金が帰ってこない場合もあるので、注意点も踏まえながらチェックしてください。
そもそも敷金とは
敷金とは、簡単に解説すると担保です。大家さんが借主から預かるお金のことで、家賃の未払いや、引越しの際に部屋の原状回復に必要な費用を敷金から補填する仕組みです。たとえば、借主の不注意や故意で行った部屋の汚損や破損は修繕する義務があります。大家さんに修繕費用の支払いがなかった場合は、敷金から修繕費用を差し引くことになるので覚えておきましょう。
賃貸物件では入居前に敷金を支払うのが一般的ですが、地域によっては敷金なしの物件も多いようです。基本的には敷金の支払いを必須としている賃貸物件がほとんどなので、予算に組み込んでおいてください。引越し費用を少しでも抑えたい方は、敷金の有無だけではく、そのほかの初期費用を節約できないか考えてみてはいかがでしょうか。
礼金との扱いの違い
敷金は貸主に預ける保証金という位置付けであり、民法では家賃や原状回復のための費用の担保として払うお金と定義されています。
一方、礼金は物件を借りる際のお礼や感謝の気持ちのお金です。礼金は法律で定義されているものではなく、慣習として支払われるものです。物件や地域によっては支払う習慣がない場合もあります。
敷金は退去時に原状回復費用との差額が返金されますが、礼金は原則として返金されません。
敷金の相場
敷金の相場は、家賃の1~2か月分が目安です。引越しの際は、敷金のほかに前家賃がかかるケースも多いため、敷金と合わせると家賃は少なくとも3か月分は準備しておきましょう。
敷金のほかにも礼金や清掃料など納める費用があるため、引越し費用は家賃の5~6か月分を準備しておくと安心です。
ペット可の賃貸物件では、敷金を多めに徴収している大家さんもいます。反対に敷金を無料としている場合もあるため、各賃貸物件の初期費用を確認してください。
敷金が無料の賃貸物件は一見お得に感じますが、退居時に部屋の原状回復費用を別途請求される場合もあります。退居時に必要な費用を先払いするといった意味では、敷金は借主としてもメリットがあるのではないでしょうか。
長く住めば多く戻ってくるの?
建物や設備はその他のさまざまな物品と同様、長く入居しているほど経年変化や通常損耗が生じます。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、入居からの経過年数に応じて借主の負担割合が減少するとされています。入居時の割合を100%とすると、耐用年数6年の設備の場合は3年後に約50%、6年後にほぼ0%となっています。しかし、これはあくまで一例なので設備の耐用年数や物件の築年数などによって変化するので注意が必要です。
東京都住宅政策本部が「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を作成しているので参考にしてください。
敷金の返金時期は?
敷金は、賃貸物件を退居してから1か月以内に返金されるケースがほとんどです。賃貸物件によっては清算の関係上により遅くなる場合もありますが、入居時に交わした契約書に敷金の返金方法や時期に明記されているので確認してみましょう。
ただし、中には催促しないと敷金を返金してくれない管理会社もあるので、心配な方は確認や催促の連絡を入れておくことをおすすめします。一般的には、敷金は契約書に書かれた返金期間内に返金されます。
ただし、敷金が全額返ってくるケースは少ないものです。壁紙の張替えや畳の張替えなどで敷金を原状回復費用にあてられるため、支払った金額よりも返金額は少ないと考えておきましょう。原状回復の難しい部屋など、場合によっては敷金は全額返金されない場合もあります。
原状回復義務の範囲
賃貸物件は退居する際に、部屋の原状回復をする義務があります。原状回復義務の詳しい内容や修繕費用の負担例を紹介しますので、賃貸物件にお住まいの方はぜひ参考にしてください。
原状回復義務とは?
原状回復義務とは、契約終了または途中退居する際に部屋を契約前の状態に戻す義務です。引越しの際に搬入した家具や家電はすべて撤去し、付属品はすべて揃えて大家さんや管理会社に返還します。
床や壁、水回りなども契約前と同じようにきれいな状態にしておかなければなりません。しかしながら、どんなにきれいに部屋を使っていても自然に劣化するものです。劣化した部分は大家さんや管理会社が原状回復することになるので、借主が業者を呼ぶなどして原状回復を目指す必要はありません。
ただし、原状回復で借主と貸主のどちらが費用を負担すべきか、線引きが難しいケースも少なくありません。事例を参考にしながら、どこまで原状回復すべきか判断してみてください。
貸主の負担の例
紛失など借主に落ち度のない鍵交換の費用は、大家さんや管理会社の貸主が費用を負担します。クロスやふすまなどの色褪せは経年劣化によるものなので、貸主が原状回復をすることになります。水回りなども使用していれば必ず劣化するものなので、貸主が費用を負担するのが一般的です。
給湯器や暖房器具など、部屋に付属している設備も貸主のものですので、借主が個人で買い替える必要はありません。
また、家具や家電の設置跡や、冷蔵庫などの家電設置による壁の黒ずみなどは部屋に住む上で致し方ない傷や汚れのため、貸主負担の原状回復が基本です。
地震など自然災害でガラスが割れたり、転倒した家具で壁が傷ついたりした場合も、借主の不注意で起こった事故ではないので、貸主が原状回復の費用を負担します。
基本的に「経年劣化や住宅で過ごす上で致し方のない設置跡や傷」は貸主負担の原状回復と覚えておきましょう。
借主負担の例
借主は、契約前の部屋の状態に戻して退居する約束をしています。そのため、借主は部屋を極力きれいに保つ努力をしなければなりません。
たとえば、結露が発生しやすい時期は窓や窓枠、サッシなどをこまめに拭くなどしてカビの発生を防ぎます。結露を放置してできたカビやシミは借主の故意や過失と判断されるため、原状回復費用の負担は借主となります。
また、壁に刺した釘やネジの穴は、借主がきちんと原状回復しなければなりません。ペットを飼っている方は、床や柱などに傷や臭いが付いた場合も借主負担の原状回復が必要なため、留意しておきましょう。
家具の設置跡は貸主負担の原状回復となりますが、キャスター式の家具で傷ついた床や引越し作業の際に壁や床にひっかき傷ができた場合は、借主が原状回復しなければなりません。
傷や汚れはどちらが原状回復費用を負担するのか線引きが難しいケースもあります。トラブルに発展しないためにも、責任の所在を明確にできる証拠などがあれば保管しておきましょう。
貸主負担/借主負担 一覧表
貸主負担 | 借主負担 | |
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壁・天井 |
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床 |
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建具や襖、柱など |
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設備・その他 |
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敷金の返金トラブルを防ぐコツ
敷金の返金に関するトラブルは、残念ながら少なくありません。トラブルを防ぐためにも、事前に対策を立てておくことをおすすめします。敷金返金トラブルを防ぐコツを3つ紹介しますので、賃貸物件にお住まいの方はぜひ参考にしてください。
退去時に必ず立ち会う
退去時は、大家さんや管理会社の担当者が部屋に入って修繕が必要な箇所をチェックします。この時に返金される敷金が決まるので、不必要な修繕費用を請求されないためにも退去時には必ず立ち会うようにしましょう。金額に納得がいかない場合は、立ち会いの書類にサインをする前に、大家さんや管理会社の担当者に金額決定の根拠を問い合わせるのがおすすめです。
退去時にトラブルにならないよう、入居時に部屋をチェックして、キズや汚れ、不具合があれば写真に納めておきましょう。
入居前に原状回復の範囲を確認しておく
入居の契約書には、原状回復の範囲が記載されている場合があります。どのような場合に原状回復費用が借主負担になるのかなど、敷金が返金されないケースについてきちんと確認しておきましょう。
契約書にサインしてからでは、敷金が返金されない場合に納得できなくても太刀打ちできない場合があります。契約書は聞きなれない言葉が並びかつ、内容が多くすべてを確認するのは面倒ですが、退居時にトラブルにならないようにきちんとチェックしましょう。
もしも、返金された敷金の金額になっとくが行かなかった場合は、各都道府県にある国民センターや不動産相談窓口に問い合わせてみてください。
入居前に部屋の状態を確認する
賃貸物件では、前の入居者がつけた傷がそのまま残っている場合があります。退居時に借主の故意や過失として原状回復費用を請求されないように、しっかりと部屋の状態を確認しましょう。実際に入居してから設備の不具合などが見つかった場合は、気づいた時点で大家さんや管理会社に伝えておくことが大切です。
敷金返金トラブルを防ぐためにも、入居時に部屋の状態を撮影した写真を保管しておくことをおすすめします。万が一、退居時に傷や汚れの責任を問われた際は、保管しておいた写真を大家さんや会社に見せると証拠になります。
最近では、動画で部屋の状態を撮影して保管している方もいるので、参考にしてください。
ペット可の賃貸物件の敷金返金についても確認
ペットを飼っている方は、退居時の清掃費用も確認しておくことが大切です。賃貸物件によっては敷金の上乗せや、クリーニングにかかる費用を踏まえ全額賠償を条件にペット可にしているケースも多いです。
敷金でも賄えない修繕費用が必要になった場合は、別途請求される場合もあるので注意しましょう。入居前に、ペットに関するおおよその賠償額などを確認しておくと安心です。
入居中はペットの爪で床が傷つくこともあるので、床に絨毯やフローリングを敷いたり、臭いが部屋にこびりつかないように空気清浄機を使ったりしながら、部屋をなるべく契約前の状態に戻せるような借主の努力も大切です。
タバコのヤニ汚れに注意する
借主によるタバコのヤニ汚れを理由に敷金が返金されなかったといったケースもあります。敷金の返還に期待したい方は、室内での喫煙を控えるなどの工夫が必要です。
ただし、タバコのヤニ汚れがあっても、経過年数は考慮されます。通常、クロスの耐用年数は6年であり、6年を超えた使用はヤニ汚れが無くても残存価値は下がります。長く住んでいる賃貸物件であれば、クロスの張替え費用はヤニ汚れに関係なく正当な価格で請求されます。
しかしながら、クロスの耐用年数6年以内のヤニ汚れで張替えが必要になった場合は、敷金から費用を差し引かれる場合があるので注意しましょう。タバコに関係なく、クロスの張替えは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に記載されているので、気になる方は確認してください。
まとめ
敷金は、家賃の滞納や退居時の原状回復費用などに当てられる担保のようなものです。部屋をきれいに使っている方もクロスの張替えが必要な場合など、修繕費用が敷金から差し引かれる場合があるので覚えておきましょう。
床の傷や壁の汚れの原状回復をするのは、状態によって貸主か借主かが退居時に判断されます。敷金返金トラブルを防ぐためにも、退居時はなるべく借主が立ち会うことをおすすめします。事例やトラブルを防ぐコツを参考にしながら、敷金返金に関するトラブルを防いでください。